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2017年11月15日水曜日

ビットコインはなぜヤバい: 第2章第6節 米国の通貨発行益は10兆円!?


 (略)

さて米国は米ドルを基軸通貨として世界中に流通させています。その流通残高は2016年末時点で約1.5兆ドル! 特に断らない限り本書では1ドル110円で換算することにしますが、円換算で160兆円以上の紙幣やコインが世界に出回っているわけです。
それだけではありません。前述したように、中央銀行は紙幣やコインだけでなく電子的に通貨を「発行したこと」にできるからです。特に2008年のサブプライムショック以降、米国FRBは未曽有の「量的緩和」に踏み切りました。ファニーメイやフレディマックといったモーゲージ(不動産担保付き)債券まで購入し、通常なら取らない信用リスク(貸し付け先が破綻し、融資が返済されないリスク)まで背負いました。
なぜこんなことをしたかというと、米国の金融システムそのものが崩壊の危機に陥ったからです。民間金融機関(銀行・証券・保険など)がバタバタと倒産すれば、一般企業も煽りを食って連鎖倒産します。現実に世界最大の自動車メーカーであるジェネラルモータース(GM)は破綻しました。そのまま放置すれば世界恐慌になる恐れがあったために、FRBは巨額のドルを発行し民間金融機関が持っている債券を買うことで「金融機関を潰さないという信用を与えた」のです。

しかしそれ以降、FRBのバランスシートは膨らみ続けました。負債側には発行したドルが、資産側にはそれを使って買った社債や国債が積み上がって行きました。20089月のリーマンショック直前に9400億ドル前後だったFRBの保有資産は、2014年末には4.5兆ドル超にまで拡大。1ドル110円で換算すれば100兆円から500兆円へと5倍に膨れ上がったのです。

図表 2 サブプライムショックによって急拡大した中央銀行のバランスシート
 













それでどうなったか?
FRB500兆円の資産から「通貨発行益」を得ることになりました。通貨発行益を計算する非常にラフな方法は、中央銀行の利益や政府への送付金額を見ることです。FRB2014年分から2016年分(直近データ)の3年間、米国財務省に対して毎年900億ドル(約10兆円!)の収入を送金しています。

米国の通貨発行益は
年間約10兆円!

ということです。
この金額は2004年には200億ドルを切っていましたし、サブプライムショックの2008年は300億ドルでした。そこから5 倍あるいは3倍になったということです。
10兆円というと大きすぎてピンと来ませんが、ポーランドや台湾の年間税収(税金による国家の収入)よりも大きな金額です。ポーランドや台湾の国民が必死に納めた税金よりも多い収入を、米国は通貨発行益だけで得ているのです。
しかし一方でアメリカという国は、その6倍の60兆円を年間の軍事費として使っています。これは日本国民が必死に働いて納めた年間税収とほぼ同じ。

米国は台湾やポーランドの税収以上の通貨発行益を得て、日本の税収とほぼ同じ軍事費を使っている

なんじゃそりゃあああ!!!!!
いやはや、あまりにもスケールが違いすぎて金銭感覚がおかしくなってきます。
誰ですかっ? こんな国と戦争しようなんて言い出した人は。

ちなみに日銀の平成28年度(2016年度)決算報告では、税引前当期剰余金が7,074億円。法人税・住民税及び事業税を差し引いた後の当期剰余金は5,066億円だったようです。ここからさらに法定準備金を積み立てて配当金を払った後の4,813億円を国庫に納付しています。
FRBの国庫納付金も日本と似たようなルールでともに通貨発行益に比例すると仮定すれば、米国の通貨発行益はざっと日本の20ということになります。
米国の名目GDPは米日本の4倍弱ですが、それと比較しても大きな差です。
さらに言えば日銀の総資産残高も、約500兆円でFRBとほぼ同じです。しかしそこから得られる収益では約20倍の差になっているのです。

もちろんそれぞれの国で事情は違いますから、単純な比較はできません。通貨発行益は金利水準によって変わりますし、取っている潜在的リスクも違うはずです。職員の給料や光熱費などのコストも異なります。そもそも通貨発行益は、多いほど良いとも限りません。というのも中央銀行が利益を上げるということは、民間銀行から利益を奪っているとも見ることができるからです。
しかしそれでも米国が凄まじい金額の通貨発行益を得ていることは事実です。やはりドルを基軸通貨として世界中に流通させていることは、大きな強みであり利権となっているのです。


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